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拡張するサービスデザイン、事例から学ぶ成功の秘訣。【IDLレポート| SERVICE DESIGN GLOBAL CONFERENCE 2017】

作成者: IDL|Jan 12, 2018 3:00:00 AM

こんにちは、インフォバーンデザインラボのサービスデザイナーのエスベンです🇩🇰

2017年11月上旬にスペインの首都のマドリードで開催されたサービスデザイングローバルカンファレンスにデザインストラテジスト・京都支社長の井登友一、デザインディレクターの辻村和正とともに参加してきました。今回は、そのカンファレンスについてレポートしたいと思います。

個別のプロジェクトから企業戦略のコアへ。拡張していくサービスデザイン

■Service Design at Scale

今年のカンファレンスのテーマは「Service Design at Scale」。サービスデザインをどうやって巨大組織全体に浸透させ、実践するべきなのかを中心に議論は展開されました。

当初、サービスデザインの活用は、チームビルディングや制作フロー、サービス設計など、個別のプロジェクト内での活用にとどまっていました。しかし、最近ではプロジェクト単体だけでなく、会社全体の組織作り、経営戦略なども包括したものにスケールしています。つまりサービスデザインが、企業戦略のコアを担う存在になりつつあるのです。

“サービスはデザインできる”というマインドセットを組織全体に浸透させることが先決

■Case1:UX専門コンサル会社を買収したアメリカ大手金融機関『Capital One』

サービスデザインが企業戦略のコアを担う存在であることを出来事の一つとして象徴的なのが、2014年の米銀行大手『Capital One』による世界的に有名なUX専門コンサル会社『Adaptive Path』を買収です。

本カンファレンスのキーノートでは、買収によってCapital On社で働くことになった元Adaptive Path社のディレクター・ジェーミン氏が登壇。巨大企業において、サービスデザインがいかに浸透し、活用されていったのか具体的に語りました。

合併当初、5,000人以上もの従業員を抱える巨大企業Capital One社にとって、Adaptive Path社のチームが加わること自体のインパクトはそれほど大きなものではなかったそうです。しかし今日に至るまでに「その変移には大きく二つのポイントがあった」とジェレミー氏は振り返ります。

一つ目のターニングポイントは、買収後初のプロジェクトが終わりを迎えたころ(1年ほど経ったころ)、他のデザイン部署が彼らのデザインプロセスをリバースエンジニアリング(reverse engineering)したときのこと。それを機に、プロジェクトにかかわらず自然とデザイナー同士で新しいアプローチの話がされるようになったそうです。

二つ目のターニングポイントの鍵を握るのがこのスライドです。

ある日ジェーミンが社長室に行くと、壁にサービスデザインの代表的なサービスブループリントの形をしていたポストイットが壁にたくさん貼ってありました。なんと経営層はジェーミン氏のチームのやり方をみて、真似していたのです。

このように、組織内でサービスデザインの考え方が経営層まで浸透したのは、「恐れずに方法や考え方を組織内で話しまくって共有していたからだ」とジェーミン氏は語ります。サービスデザインの考え方やスキルを自分だけのものにするのではなく、フリーに共有して組織のものにする。そうすることで、サービスはデザインできるものだというマインドセットが組織全体に根付いていったのです。

この話を聞いて思ったのは、サービスをデザインするには、もちろん適切なツールや方法を活用するためのサービスデザインへの「理解」が重要ですが、それ以上にサービスはデザインできるものであると意識したチーム全体の「マインドセット」が大事だということです。

サービスは、さまざまな役割を担う人が関わり合うことで提供されています。その提供をより効率的で素晴らしいものにするには、サービスデザインのマインドセットを組織全体がもち一体となる。その時に、シナジー効果が生まれていくのだと改めて感じました。

エージェンシーとの分業はしない。同じチームでリサーチから、プロトタイピング(試作)まで一緒に議論する

■Case2:エージェンシー『Continuum』✕航空会社『Southwest Airlines』

サービスデザインがスケールしていくなかで、エージェンシーの関わり方はどう変化していくべきでしょう。

アメリカのボストン市に拠点を持ち、商品をはじめ、サービスのデザインまで支援を提供しているエージェンシーContinuum社は、エージェンシーと企業の今後の関わり方について、非常に参考になるケースを共有していました。

それは、アメリカのSouthwest Airlinesという航空会社との取り組み。プロジェクトの詳細は、以下の映像で見ることができます。

プロジェクトの開発は、空の旅において、どうすればより良い体験を顧客に提供できるのかというところからはじまりました。飛行機での体験は、航空会社以外にも、ツアー会社や保険会社などさまざまな利害関係者、国の法律などの観点を考慮し、限られた範囲でサービス向上を目指していました。

こういった関係者も多く、大規模な取り組みでよくあるパターンは、まず社内で課題を定義して、リサーチはリサーチ会社に任せ、その結果を見て、社内でデザインを考えて、その商品をデザイン事務所に任せるパターンです。しかし、今回の取り組みではContinuum社とSouthwest Airlines社が密に連携して、リサーチと課題定義から、プロトタイピング(試作)の最終ステージまで一緒に行いました。そうすることによって、Southwest Airlines社が最新の技術と知識を持ったチームと長期的に議論し、一緒に考えるチャンスを手に入れたそうです。

このように、サービスごとに実施されていたプロセスを、エージェンシーが企業のパートナーとなって横断的に取り組む。これからサービスデザインがスケールしていくなかで、エージェンシーの活躍の場は、個別プロジェクト(discreet project)から体系的なプロジェクト(systemic projects)に変化するのではないかと個人的に考えています。

エージェンシーが体系的なプロジェクトを成功させるにはどうすべきか?

(ダイヤグラム: 辻村和正)

体系的なプロジェクトとはどのようなあり方であるべきか、いちエージェンシーとしてさらに深く考えてみたいと思います。

サービスだけでなく、組織的に、さらには体系的なプロジェクトにスケールするための大きなポイントは、どうすれば一つのプロジェクトで得た顧客、マーケティング、ビジネスモデルのインサイトを戦略に活かして(loop-back)、次のプロジェクトにおいて、より一体感を持った価値提供にできるのか、です。

エージェンシーとして、横断的に関わるならば、別プロジェクトへの展開への障壁を緩和するために、各プロジェクトでのリサーチやプロトタイピングで得たインサイトをわかりやすく、使いやすくしていく必要があります。そうでないと、start-stop-start-stopパターンになって知見が蓄積されず、長く深くパートナーと協力して顧客視点にサービス提供を近づけていった企業には敵わなくなってしまいます。

また、エージェンシーそのものを買収しようにも、それは企業文化に合わないリスクもあります。一方で、社内で自前のサービスデザインのチームを育てるのは、時間もパワーもかかります。そんなリスクに悩む企業へベストアンサーとなるような、エージェンシーを私たちIDLは目指していきたいと思います。

The Definition of Design is Never the Same!

サービスデザインに関わるコミュニティメンバーが世界中から集まる『Service Design Global Conference』は、今年10年目という節目を迎えました。

私たちインフォバーンは、2013年のストックホルム開催から毎年参加してきました。そのため、最新情報に触れるだけでなく、コミュニティーとの関係も深まり、カンファレンスで国内外問わず他のメンバーと久しぶりに会ったりするのも楽しみの一つだったりします。私の母国であるデンマーク支部の皆さんと久しぶりに会えるのもそうです。さらに、まったく新しい知り合いもすぐでき、互いの悩みをその場で相談できるのは、私がカンファレンスに参加する最大の理由です。

グローバルコミュニティーのなかで日本支部(Japan Chapter)は他の支部と比べてかなりアクティブです。そうした積極的な姿勢が評価されたのか、今回カンファレンス開催の前の日に行われたメンバーズデイでは、コミュニティー賞とPR活動賞を受賞しました。(※1)

最後に授賞式があったメンバーズデイのパネルでオーディエンスから、次のような印象的な言葉がありました。

Design is about understanding the world we live in, and the world never stops changing, so the definition of design is never the same

デザインとは、私たちが生き、変化を止めない世界をどう捉えるかということだ。だからこそデザインの定義も、変わらずにいることなどあり得ない。

やり尽くされたように思えるかもしれませんが、顧客のインサイトをベースにしたサービス開発のチャンスは、山ほどあると感じます。ぜひそのチャンスを一緒に捕まえていきましょう。

※1

  • コミュニティー賞:日本のサービスデザインコミュニティが開催したイベントの数などを評された。
  • PR賞:主に株式会社コンセントのリードで去年出版されたService Design in Public Sector Impact Reportの和訳と出版で受賞