2024年5月18日(土)に東京の九段下にて開催された、RESEARCH Conference 2024。当日ライトニングトークを実施したデザイナー・山岸とアフターイベントを行うデザインストラテジスト・髙塚が、今回インフォバーンが主題として取り扱っているポストヒューマンデザインをテーマに、その考え方や音を通して社会を観察する方法論について、部門長の辻村とダイアローグを行いました。
今回対話したメンバー(トップ画像左から)
辻村 和正(イノベーションデザイン事業部 ゼネラルマネージャー)、髙塚俊(組織文化デザイン事業部)、山岸智子(イノベーションデザイン事業部)、山下佳澄(イノベーションデザイン事業部)
こちらのダイアローグは音声でもお聴きいただけます。
🎧IDL/R
ポストヒューマンデザインへの足掛かり。“音”に着目したリサーチの開き方 - IDL/R Design Dialogue vol.19
山下:今日は、今年のRESEARCH Conferenceで山岸さんがライトニングトークのテーマにされたポストヒューマンデザインの捉え方や、そのアプローチとして私たちデザインチームが持っている「Sound & Thinking」を中心に話していきたいと思ってます。カンファレンス自体は、先日5月18日(土)に終わったんですよね。
辻村:はい、大盛況のうちに。
山下:私は会場に行けてないのでその話聞きたいんですけど、実はアフターイベントの開催を6月16日(日)に予定していまして、その内容も合わせてお話ししたいと思ってます。
RESEARCH Conferenceを簡単に紹介すると、
RESEARCH Conferenceはリサーチをテーマとした日本発のカンファレンスです。より良いサービスづくりの土壌を育むために、デザインリサーチやUXリサーチの実践知を共有し、リサーチの価値や可能性を広く伝えることを目的としています。行政、大企業、スタートアップなど立場の違いを超えて、活発な議論を重ね、共に学び合うリサーチコミュニティを育てることを目指します。
(RESEARCH Conference 2024 webサイトより)
というカンファレンスで、今年が3回目の開催でした。インフォバーンは初年度からスポンサーとして関わっていて、昨年は、私たちがなぜRESEARCH Conferenceに参加するのかを含めて、デザインとリサーチがどう絡まり合っているのかを語ってもらいました。
関連記事:アウトプットではなくプロセスから価値を生み出す、デザインリサーチの新規性とは
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山下:辻村さんは今年も会場に行かれましたけど、その辺り含めて今年の様子はいかがでしたか?
辻村:そうですね、元々知り合いのANKR DESIGN・木浦幹雄さんが立ち上げたカンファレンスだったこともあって初回から3年連続でスポンサードさせてもらっていますが、どんどん規模も大きくなってスポンサーの数も増えてますね。取り扱うテーマも、ユーザーリサーチやマーケティングリサーチはもちろん、デザインリサーチとか「リサーチ」とつくもの全般を扱っているので、裾野もかなり広くなってきていると思います。
その中で、今回はマギー(山岸さん)にライトニングトークで話してもらって、後で紹介するアフターイベントもそうだけど、ポストヒューマンデザインっていう、「なんだそれは」って耳目をひくようなキーワードを意図的にテーマにしてみました。
“人をしっかりリサーチしていくだけではこぼれ落ちてしまう視点”がどんどん顕在化してきているし、そこにリサーチャーとしてどう関わっていくのかっていう問題提起をするのが狙いですね。
山下:私も「今年はこれ取り上げるんだ!」と思ったうちの1人でした。
辻村:去年は『デザイン・スルー・メディア ~企業がメディアを持つ意味を「価値創造のベース」にリフレーミングする~』のタイトルで、デザインリサーチとメディアの掛け合わせからどういった新規性を創造できるかっていう提案をさせてもらいました。アフターイベントでは、リサーチ・スルー・デザインと、少しテーマを変えてゲストをお呼びしましたね。
山下:京都で開催したRESEARCH Conference Pop up in KYOTOですね。
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https://idl.infobahn.co.jp/mag/research_conference_popup
辻村:実は去年も、RESEARCH Conference事務局をされている木浦さんから「皆わかってくれるかな。ちょっと難しいかも」って言われたけれども、今年も同じですね。ある意味advancedと思われるかもしれないけど、あえて発信することによって新しい気付きであるとか、気付いてはいたけど見えていなかった別の側面が明らかになるといいなってスタンスで。弊社はそんなキャラクターでスポンサードしていきたいと思ってる次第です。
山下:なるほどね、ちょっとポジショニング的な意図もあったりするけれども(笑)。そこだけじゃないですからね、今日はその中身を深掘りしていきましょう。
当日のポスターセッション会場の様子。非常に盛況でした
山下:今年、山岸さんは登壇者として会場に行かれたけど、会場での参加は今年が初めてでしたっけ?
山岸:そうですね。びっくりしました、賑わいように! セッションの聴講者も多かったけど、ポスターセッションもすごく盛り上がっていて、ポスター発表する方だけでなく、聞く側も非常に真剣で、学生さんと企業の方の交流もたくさん見られました。
山下:へー! 学生さんと企業の交流は、場がセッティングしてあるんですか?
山岸:場も設計されていたし、学生さんが「今後、仕事として携わりたいんですけど」みたいな感じで積極的に企業の方に話しかけているところも見られて……「なんてこった! 皆真面目だなぁ」って思いました(笑)。
辻村:ポスター発表は今年度からの試みですよね。僕も当日お昼から18時頃までいたけど、実質ポスター会場にいた時間が長かったんじゃないかな。
元々の知り合いとか発表者の方と知り合ってずっと会話してた感じだったので、来年度はポスター発表も出さないといけないなと思いました。出すことによって本当に話しがしやすくなる。
山下:ポスター発表って、いわゆる学会みたいにポスターの前にリサーチャーが立ってて説明する感じの?
辻村:その通り。
山下:それは会話が弾みますね、具体的にも聞けるし。
辻村:うん、けど学会みたいに緊張感みなぎる感じではなくて、いい雰囲気でしたね。
山下:それで、山岸さんのライトニングトークのテーマなんですけど、『ポストヒューマンデザインリサーチへの挑戦〜人間以外の存在との関係性から読み解く可能性の探索〜』ですね。
「かっこいい〜!」ってなるんですけど、だいぶ難しいので(笑)。ちょっと教えてもらいたいなって感じです。
ライトニングトークで登壇した山岸。話し足りなかった分を今日皆で話します
辻村:どんなところから難しい印象を受けました?
山下:そうですね、進行役なのにちょっと自分語りしますが、私すごく田舎育ちで、自然とか生き物、土壌とか、人以外の存在に目を向けるって言われると、元々当たり前やんっていう感覚を持ってるんですよね。人以外の存在って周囲に溢れているし、そういったものたちが人間の都合になんか合わせてくれない実感があります。
それぞれが複雑に絡み合っていて、どんな変化が起こっているのかさえ人間には掴みきれないって感じてるから、「いざ、デザイン」ってなると、規模が大きすぎて何をしていけばいいのかわからないって気持ちが湧き起こっちゃうんですよ。
山岸:なるほどね。
山下:なので、まずポストヒューマンデザインって何なのってところから教えてください。
山岸:そうですね、まずはその捉え方で間違いないです。ポストヒューマンは、社会を構成するのは人間だけじゃない、生物もいれば植物とか人工物も、最近で言うとAIもどんどん出てきているし、そういったもので社会は構成され、それぞれがつながり合っているという捉え方だと私は認識してるんですよ。
ポストヒューマンの“ヒューマン”は何かというと、人間中心に捉えていた視点だと思います。「社会は人間中心にできていて、人間の欲望を満たすためにいろんな資源を使っていこうじゃないか」っていうのが人間中心主義といわれているんですけど、その批判としてポストヒューマンの考え方が出てきたんですね。
山下:うん。
山岸:そこで、その視点から新しい可能性を見つけるとしたらどういう手段があるんだろうって、今回我々が新たなデザインリサーチのあり方を提案した形です。
辻村:ポストヒューマンとかモア・ザン・ヒューマンって言い方をするけど、その対象はざっくり上げるとspecies(種)とthings(もの)の2つなんですよね。speciesは生物、動物、植物といった存在だし、thingsは人工物っていう捉え方で、特に人工知能や人工生命のように“より知能や生命感が感じられるような対象”も指したりする。
僕たちはthingsの中でも、特に人工物に着目したいなと思ってます。現状はAIのような技術がthingsのように認識されているけど、人間が作ったそのほかのものも含めてですね。学会なんかでの議論を見ていると、例えば、今使ってるzoomなんかもモア・ザン・ヒューマンの対象になってきているんですよ。
山下:うーん。
辻村:最近、アルトゥーロ・エスコバルという人類学者の「多元世界に向けたデザイン」って書籍が出て、その中で言及されていた“人がものを作る一方で、作ったものから人も影響を受けている”っていう「存在論的デザイン」の議論も接続すると思うんですけど。新しい技術が生活の中に現れた時に、間違いなく変化はしてるんだけど、何によってどういった変化をさせられているのかって視点での議論は意外となされてない。
特にデザインリサーチの文脈だと、人をリサーチしようとか、ユーザーを探しにいこうってところから“無自覚的に始めてしまうこと”への警鐘も必要だと思うし、周辺の技術的なものを含めた存在をしっかり見ていくっていう提案というかね。
それであえてポストヒューマンって言葉を出したのがあるかなと思っている次第。
山下:そういえば、デザインしたものにデザインし返されているって話しがありましたね。
デザイン対象として生み出したものが、それに合わせた習慣とか行動を生み出して、結果的に人間側に返ってきているけど意識的に捉えられていない。人間中心の視点だとよりその欠如に気づかないから、違う捉え方をしようっていう提案なんだ!
辻村:うん、この会話にもこの4人のほかにAIが2つ入ってるわけですよね※。
※オンラインで収録しています。
まさに今も、人以外との調整が普通に行われていて、その結果僕たちは書き起こしや音声、映像の記録を享受している。使っていなかった頃と比べると、業務の仕方は確実に変わってるし、そこからはじまるデザインも変わってると思うんですよ。
話を戻すと、いろんな事業を考える時に「とりあえず人から見ておけばいいのか」っていうと、それは必要十分じゃないって話には行き着くのかな。
山下:確かに。この収録を始める時も私、「nottaさん入れるんで、ちょっと待ってね」とか言ってたな。AIを無意識に人のように扱ってるし、関係性って変わってますね。説明されると難しそうって感じるけど、割ともう皆の日常に浸透してる感覚なのかもしれないとも思ってきました。
辻村:うん。浸透してるものにまず気付いて、「それを読み解くリサーチの方法って何だ?」って問う。読み解いた結果、人間の生活へのインパクトを考えたり、そのインパクトの結果から「どういったものをデザインし返したらいいのか?」って考えたり、一連の発想ができるはずだけれど十分にできてない。
あえて仕事の話に持っていくと、新規事業とか今ないものを考える時により使うべき発想かなと思うんですよね。今まだないのでユーザーがいない。じゃあ、どこをよすがとして話を進めていくのか。その時に、常日頃から共存してる人以外の存在の視点から考えてみようとかっていうのは、一つヒントになるのかなって思ったりしてるので。ビジョンや新規事業を考える時には結構使えるんじゃないかな。
山岸:「どうデザインし返すのか」って表現、面白い。
辻村:デザインするんじゃなくてデザインし返す、あるいはデザインし合うもあるかも。
山岸:「どうデザインし合えるのか?」っていう問いの投げかけ方から、もう違ったものを生むきっかけになるかもしれないですね。
辻村:やや小難しい話になるんですけど、「ユーザー」っていうじゃないですか。でも「ユーザー」とした時点で人間であって、さらに特定のブランドの特定のプロダクトを使う人だと限定しているので、ポストヒューマンデザインの視点だと、デザインする人が“特定の人の中心性をかなり強化した状態”を作っていることをわかっていないといけない。もちろん便宜的に対象を設定することからは逃れられないと思うけど、その設定によって起こる排除を認識してるかどうかが非常に重要かなと思っているんですね。
例えばスマホのアプリを設計する時に、画面遷移の心地よさとか使いやすさを考えたりするけど、そこには「作る側」と「使う側」の非対象の関係があるわけです。作る側は良かれと思って作る。本当にいいかどうかは検証するけど、そういった非対称の関係の中でインタラクションデザインをしている。
カレン・バラッドっていう研究者の方が提唱したイントラ−アクション(intra-action)って言葉があるんだけど、「デザイナー」「ユーザー」のように関係性をあらかじめ設定した状態からではなくて、そもそも「人と人」としてフラットに、そこにスマホが加わった時にも「物と人」の関係をフラット考えてみたら、どんな可能性が立ち現れるか。そんな風に目的や意味づけが、先に立たずに後からやってくるっていう発想がイントラ−アクションにあるんだけど、「作る側」と「使う側」のヒエラルキーの中ではそういった発想はしづらい。
さらに、「使う人」と「使わない人」と、使用を前提とするのではなく、人を1人の存在として、物との関係をフラットに捉えた時に、「本質的に求められるのはどんなことか?」って考えられると、必ずしも「使う」ではなく、置いてあればいいっていう存在のさせ方をデザインすることもあり得るかもしれない。
辻村:ポストヒューマンデザイン的な発想を持つと、そんな風に議論の幅を広げることにつながってくる。ユーザー設定とかインタラクションを考えるところにもかなりヒエラルキーがあるんだと自覚することが、今後本当に必要になってくるだろうと思う。
山下:ってことは、人以外の存在に目を向けていくだけでなく、人同士でもより共創的なアプローチが必要になっていくんですかね?
辻村:ですね。ロージ・ブライドッティっていう方が「ポストヒューマン 新しい人文学に向けて」って本を書いてるんですけど、そこではその“ヒューマン自体”を西洋・白人・男性みたいな存在だとすごく象徴的に扱ってるんですよね。つまりそれ以外の我々含めたアジア人とかとの間に、ある種の二項対立を生じさせているわけですよ。人と人の間にも、対立や対構造が無意識的に作られたりしている。そこを瓦解させていくような発想がポストヒューマンの背景にあり、それをデザインに転用させるには、「どういった方法ないしは考え方でデザインリサーチを進めると良いのか?」の問いに接続する。
この辺は本当に議論されてる最中なんで、具体的にどうやればいいのかっていう話も何が正しいかわかんない。けれども、その発想を基にして具体的実践を作っていく段階かなって思います。
山下:なるほど(“小”難しいどころやなかった……)、ありがとうございます。
山下:山岸さんって特に人間中心設計への学びを深めながら、UIからUX、そしてサービスデザインへと領域を広げていった人って認識してるんですけど、まさに人間中心設計を実践してきたデザイナーの視点ではこのような潮流ってどう受け止められてるんですか?
山岸:ポストヒューマンデザインの逆側が人間中心設計とは思っていなくて、それはそれで必要なんですよね。現状は人が人を思ってサービスやプロダクトを設計することが多いし、そうするとどれだけ使いやすいかとか、どれだけ継続して使えるかって考えないと態度変容や行動変容も起きないので、変わらず重要だと思ってます。
山岸:一方で、今はそれだけではダメだとも感じていて、人間中心設計ばかりに偏ってしまうと影響を受けるものの存在が忘れ去られてしまう。そのバランスをとって考えないといけないんだろうな。人間中心でデザインするけれども、常にポストヒューマン的な視点でどうかとか、ドーナツ経済学※っていう概念もあるけど、それならどうかとか。いろんな観点から考えないといけない時代だって捉えてます。
今回「ポストヒューマンデザインリサーチ」の発表をしたことで一歩踏み出せたし、非常にありがたいと思いました。今はまだ修行中の身だからポストヒューマン研修生なんですけどね。
※ドーナツ経済学:イギリスの経済学者 ケイト・ラワース氏が提唱した、自然環境を破壊することなく社会的正義(貧困や格差がない社会)を実現し、全員が豊かに繁栄するための方法論
辻村:面白いな(笑)。
山下:意識的に切り替える必要はあるけど、アプローチが全く変わってしまうって話ではなくて、まずは既存のアプローチに批判的な視点を加える感じですかね?
山岸: うん、そうだと思う。
辻村:最初にポスター発表会場の様子を話したけど、その中で「山岸さんの発表を目指して聞きに来ました」って話してくれた方もいたので、投げ込んでみた価値はだいぶあったのかなと思いましたよ。
山下:山岸さん、その方と直接お話しできました?
山岸:話しました! 他にも、会場でいろんな方から「自分はこう思ってるんですけど」みたいな話しもしていただけて研修生の学びになりました(笑)。
辻村:僕は議論したいと思ってるし問題提起でもあるんだけど、ライトニングトークだけだとぶん投げて終わりみたいになっちゃうので、アフターイベント含めないと完結しないかなと思って、今回はセットで構想した感じです。
山下:確かにね、アフターイベントも体験してもらって、やっと何が投げ込まれたのかが掴めるのかもですね。どんな内容でどういった意図を含んでいるのか、ちょっとお話ししましょうか。
髙塚:うん、イベント名は「Sound & Thinking渋谷」で、僕がイノベーションデザイン事業部にいた時の構想をベースにしたプログラムです。元々は、“人と組織のクリエイティビティを触発する装置”のような役割をイメージしていて、教育プログラム的にできたら面白いかもって考えていました。
そこに今回のポストヒューマンデザインの話しが出てきたんですけど、普段僕たちって視覚的な情報や人からの証言とかに無意識に頼りきっているんじゃないかなと。
そこで、あえて“音”に注目すると視点を変えられるんじゃないかっていう発想です。個人的には俯瞰した視点で物事を捉えやすくなると感じてて、目に見えなかったものへの気付きも出てくるし、それらを読み解いていくとこれまでと違った発想が出てくるかもしれない。
つまり、観察の対象を音に拡張して、新たな可能性を探索してみようじゃないかっていうのが意図です。
山下:いいですね。
髙塚:具体的な内容はイベント情報を見ていただきたいんですが、まず午前中は参加者の皆さんに渋谷の街に繰り出してもらって、お題に沿った音を収集していただきます。いわゆるフィールドレコーディングを簡単にやってみるってことですね。
午後からどんな音が拾えたかを共有し合って、その音を素材にGarageBandで簡単な音楽作品の制作みたいなものをやろうと思ってます。MacやiPhoneには最初からインストールされていたり、後から無料でインストールもできたりするし、触ったことない方向けに簡単なチュートリアルを行いながら進める予定なんで、その点はご安心ください。
山下:初心者でも大丈夫ですね。
髙塚:作品が形になった時点でまた共有して、音を通して浮かび上がった渋谷の可能性とか課題を探るディスカッションをしたいと思ってます。
京都で試した時も結構面白い音があって※、今度は大都会・渋谷のど真ん中なんで、どういう感じになるのかなって楽しみにしてます。
※イノベーションデザイン事業部、組織文化デザイン事業部は東京と京都に拠点があり、今回の座談会メンバーは京都支社に在籍しています。
山下:京都の時は、“京都っぽい音”を意識したのもあったじゃないですか。お寺で録ったとか、砂利の上を歩くとかね。渋谷だったら電車とか道路の音も多そうだけど……でも何か思わぬ音とか拾ってくる人もいそう!
髙塚:そうなんですよ、ワークショップでは「意外とそんな音あるんだ」みたいな気付きがあるんじゃないかなと思ってます。
山下:音を通すとどんな渋谷が見えてくるのかなって非常に興味深いですね。
山岸:アフターイベントを設計する中で、「聴覚を研ぎ澄ませてみたらどんなもんだろう?」と思ってしばらく生活してて。例えば電車に乗る時、普段は線路って意識しないけど、聴覚に意識を向けると乗ってる電車の線路が立ち現れてきて、人以外の存在にも気付きやすくなるのかなって感じました。
辻村:僕もRESEARCH Conferenceの朝、「何が聞こえてくるかな」と思いながら九段下まで歩いたんですけど、意外とそんなに人の存在って出てこないんですよ。「人間以外の存在に目を向ける」って言説としては簡単に言えるけど、実際に街を感じたり体験する中でそういった存在を浮かび上がらせたりする方法として、聴覚に意識を向けるのは結構面白いと思います。
山下:この間、京都の中心地で消防車のサイレンがいっぱい鳴ってた時に、チームの数人で「うちにも聞こえてくる」みたいなチャットをしてて、なんとなく把握してた位置関係が違う形で感じられたってことがありました。
山岸:私はあれで京都の町の小ささを感じました。ヘリコプターの音は皆聞こえてるんだとかね。
辻村:その視点いいね、音からスケール感につながるの面白い。
リサーチって、既存のものを観察して正しく整理する左脳的な仕事と思う方も多いかもしれないけど、実は創造的なことが求められてると思ってるんで、耳を含めて感じる、感じたものを今度はどう表現するかってところも含めて、Sound & Thinkingは良い試みなんじゃないかと思う。
音からアウトプットを作るのもポイントで、リサーチのアウトプットってドキュメントになるケースが多いから、作品を通して表現するとか、リサーチプロセスの中に作品が入ってくるのがいいなと思う。作品が入ってくるとスペキュレーションってキーワードが浮かんでくるけど、目で見て考えたことをアウトプットとして言語化する行為の間に、音がマテリアルとして存在している。それがインサイトの幅を広げると思うんで、そこもユニークかな。
山下:デザインリサーチに“音を使う”アプローチが加わったのは非常に面白いですね。
辻村:うん、本当にそうだと思う。視覚情報のオルタナティブとしての音の話しを今しているけど、他にも触覚とか味覚を使いながらとかね、色々。
山下:最初にすごく難しい印象って言ってたのが、自分の五感を意識するだけでも触れられるものみたいな、近寄ってきた感触が得られたので個人的にも非常にありがたかったです。皆さん今日はありがとうございました。
紹介されたRESEARCH Conference 2024 アフターイベント「Sound & Thinking 渋谷」は、2024年6月16日(日)に開催が迫っています。ご興味のある方はぜひお申し込みください。
Sound & Thinking 渋谷 RESEARCH Conference 2024 アフターイベント
開催日時 2024年6月16日(日)10:00〜18:00
会場 株式会社インフォバーン 東京オフィス(本社)6F
https://maps.app.goo.gl/KzCQJeELs7YiF4Dd7
詳細はこちら:https://connpass.com/event/318660/
※多くの方にご応募いただきすでに定員数を上回っておりますが、本イベントは抽選形式のため6月2日(日)19:00までご応募が可能です。
執筆:Design Strategist 山下 佳澄、撮影:Design Researcher 林 佑樹、岩﨑 祐貴
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