こんにちはインフォバーンKYOTOの辻村です。 今回は10月2日・3日にニューヨークで行われたService Design Global Conference 2015の様子をレポートします。
>>後編「サービスデザインの国際会議“Service Design Global Conference2015”参加レポート(2/2)」はこちら
デザインスクールとして世界的に有名なParsons School of Designの校舎を利用して行われたService Design Global Conference 2015。2日間、みっちりとタイムテーブルが埋められ、濃密なカンファレンスとなりました。今回のレポートでは、計4回行われた基調講演を中心に報告します。
今年のカンファレンスのテーマは‟A journey to value”。
過去20年に起こった技術的進歩は、クライアントや組織へのアプローチをはじめ、働く私たちの行動や生活の質(Quality of Life)にも著しい変化をもたらしてきました。今まさに大きな変化の渦中にあって、働き方や顧客への提供価値に対する考え方、その計測方法(from ROI to human impact)などをテーマに、私たちがどのように考えて行動していくべきかを中心にさまざまな議論がなされました。
今回のカンファレンスで私が密かに期待していたことは、日本国内と欧米とのサービスデザインへの認知や普及、実施状況の「差を知ること」。結果的に、うっすら予想していたことではありましたが大きな差を認めざるを得ませんでした。
正直、サービスデザインを実践していくうえでの手法やツールは、これまで実務で目にしたり、使用したりしてきたものと、大きな違いはありません。デザイン思考や人間中心設計で用いられる方法論を主としたアプローチが多くのセッションで語られていました。しかし、それ以上に、このような手法やアプローチを用いてサービスデザインを行ううえでの姿勢や、ポリシーの重要性を目の当たりにしました。
体系的にサービスデザインについて書かれた書籍「This is Service Design Thinking」では、以下のようにサービスデザインにおいて5つの基本原則を示しています。
※マーク・スティックドーン/ヤコブ・シュナイダー編(2013), THIS IS SERVICE DESIGN THINKING Basics-Tools-Cases 領域横断アプローチによるビジネスモデルの設計、ビー・エヌ・エヌ新社 p.34
今回のセッションを通じて、私が特に強く感じたことは、「Co-Creativeであること」「Holisticな視点に立っていること」、さらには「sustainableであること」の重要性でした。
初日のキーノートで早速、共創(Co-Creation)をベースとした取り組みが紹介されました。Harken Health社のRyan Armbrusterの発表テーマは、サービスの享受者理解(Understanding)に基づく「関係性(Relationship)の構築から信頼(Trust)を獲得」。そこで語られた一連の行為は、どの組織においても重要であり、かつ、多くの課題 があることを再確認できました。
さらに追い打ちをかけるようにCiti社のBilly Seabrookの以下の言葉は、兎角手柄を独り占めしてやろうと思いがちな人には耳が痛いものとなったかもしれなません。
「自ら良いアイデアを思いつこうとするよりも理解をともにし、議論することがより重要である。(”Getting the right people and the right chemistry is more important than getting the right idea.”)」 私自身、デザイナーの端くれとして、良いアイデアを思いつくことに独り終止してしまう傾向があるのは否めません。ですが、それよりも先のロンドン滞在記でも触れたように「仲間と議論しならが定義していく」姿勢が改めて重要、というよりスタンダードであることを痛感しました。
企業にデザイン思考の文化を根付かせるためにエバンジェリストチームを結成し、地道に「布教」活動を行う。大企業のCiti社がそれを行う背景には、サービスデザイン的思考や文化の普及が、投資に値するものと認識されているからでしょう。Citi社では下記の3つのキーワードを用いてその取り組みが紹介されていました。
さらに、GE社のKatrine Rau & Katrina Alcomの報告では
と、デザイナーに求められるマインドを植え付け、デザイナーとして権限を行使させるところまで、企業として踏み込んで取り組んでいる点も興味深い報告でした。
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